家族選択システム

昔は婚前恋愛が一般的だったそうだ。離婚や不倫という文化も存在したらしい。なにかあるたび傷付き憎しみあって、なんて非効率的だったんだろう。
今では全てAI任せが当たり前になっている。恋愛という消耗作業をしたがるひとはいない。僕らが生まれたときから集められ続ける膨大なデータをもとにパートナーが選び抜かれるから、決して間違いがない。僕の両親もAIによって結ばれた。隣家のパパふたりもそうだし、彼らの養子になった少女だってやはりAIの選択だ。みんな、AIによりもたらされる穏やかな幸福に満足している。
だが、予想外の出来事が起こった。
「突如AIがデータにアクセスしなくなった模様です。家族選択システムは中断を余儀なくされ、復旧の目処は未だ……」
恋愛のことをちらりと思い浮かべたけれど、すぐに興味を失う。これもAIの選択のひとつなのかも。ならば僕たちはそれを受けいれるまでだ。だって間違いはないのだから。