塀の上で

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僕らはいつも塀越しにおしゃべりをする。
「たまには塀を出て遊びに行かない?」
「でも、ママがここから出ると心配するの」
彼女のママは心配性で、塀の外に出るのを許さないらしい。
「だったらさ、一度でいいから君の姿を見てみたいな」
砂糖菓子みたいな声を聞きながら、その姿を想像する。
「いいわよ。私がいいというまで目を瞑っていて」
僕はドキドキしながら急いで目を瞑った。
「いいわ。目を開けて」
塀の上で月に照らされた真っ白な毛並みの彼女が立っていた。しなやかな体が波打ち、よく見ると左右で昼と夜みたいな目をしてる。僕はたまらず、ジャンプして塀に上った。僕の黒い毛並みと彼女の白い毛並みが昼と夜みたいに混じり合う。
それから、僕は塀の向こうの白い恋人と度々塀の上のデートを重ねた。

で、僕は今、塀の向こうにいる。なんでかって?生まれたばかりの白い小さな恋人たちが塀の向こうで僕を待ってるからさ。
その他
公開:18/09/26 17:43
更新:18/09/26 18:06
スクー 塀の中の白い恋人

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

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