花ライオン

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初夏。旅先の父から小包が届いた。中には向日葵が一輪と手紙が一枚。
「この子が再び咲くころ帰ります」
このこ。頬が緩んだ時だった。
がるう!
なんと向日葵が吼えた。見ると、花びらの真ん中にライオンの顔が。茎葉の代わりに四肢が生えている。黄金色の花びらは、事実この子の鬣だったのだ。唸るので、朝食のウィンナーを見せると、一口で食べた。花頭でも肉食獣だと感心して、毎日肉料理を作った。
名前はひまにした。ひまと居ると一日は光のように過ぎ、やがて晩夏になった。
ある朝、ひまの鬣がもの寂しいと気付いた。色の輝きも少ない。花びらは連日抜け落ちた。遂に最後の一片が失われた日の朝、ひまは動かなくなった。
「ひま」
そっと額に触れると、そこからひまの身体はほろりと崩れ、綿毛の様に風に舞い去った。
泣かなかったのは、掌に残った種と、父の手紙のおかげだった。庭に植えた種に今日も水を撒く。
指折り、初夏を待っている。
ファンタジー
公開:18/09/26 15:12

rantan

読んでくださる方の心の隅に
すこしでも灯れたら幸せです。
よろしくお願いいたします(*´ー`*)

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