「糸」

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一本の糸がどこからともなく垂れ下がっていた。
その糸がクネクネ、クネクネと動いている。風が吹いているわけではない。ひとりでに動いていた。
それは、まるでダンスを踊るように。時に華麗に、時に不気味に、時に滑稽に。糸は様々な動きをしている。

そんな糸に目を奪われている女性たちがいた。
彼女たちはそれぞれ美術家、画家、小説家、詩人、写真家と、芸術の分野で活躍している面々であった。
クネクネ、クネクネとひとりでに動き続けている糸を眺めながら、みな口元を緩めている。

「なんと美しく愛らしいのでしょう。こんなの初めてだわ」
「お見事と言うしかない素晴らさね。絵に収めたいくらい」
「どうなっているのか興味深いです。文字で表現できない」
「風情があってよろしいですわねぇ。一句詠みたくなるわ」
「あまりのおかしさに笑えてきます。うまく撮れるかしら」

そして五人は、ポツリと声を揃えた。

「いとをかし」
その他
公開:18/09/26 00:52

壬生乃サル

まったり。

2022年…3本
2021年…12本
2020年…63本
2019年…219本
2018年…320本 (5/13~)

壬生乃サル(MiBU NO SARU)
Twitter(@saru_of_32)

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