透き通る

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「透き通って見えるよ」
「じゃ父さんのパンツは?」
「青と白のシマシマ」
「すごいぞ坊主!」
おとうさんは足で拍手した。
だって、短パンの隙間からパンツもその中身も出てるんだもの。
「よし、お山の階段へ行くぞ」
 ぼくはヘンだなと思ったけどおもしろそうだと思った。
「坊主、目をつぶれ」
 おとうさんにおんぶしてもらって階段をおりた。
「いいぞ」
 ぼくは目をあけた。
 透き通っていた。階段も山も家もとりも空も、みんな透き通って小さな何かがうごめいていた。
「透き通ってる…」
 おとうさんは針金人形みたいだった。
「おとうさんっ」
 ぼくはおとうさんにしがみついた。針金がチクチクした。
「親父に言われたんだ」
おとうさんが言った。
「いつかお前の子もここにつれてくるんだぞって」
「ぼくも?」
「そうだ」
 おとうさんはぼくの頭をくしゃくゃってした。
 帰り道。透き通った黒い空が明るかった。
ファンタジー
公開:18/09/28 16:35

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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