鴉女(あめ)

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梅雨でもないのに、どしゃぶりの日が続く。僕が子供の頃、こんな暗い雨の日は、あめが来ると言われてた。あめは鴉女と書く。鴉はカラス科の鳥の総称だ。鴉女は黒ずくめの女で、黒いこうもり傘を持っていた。
鴉女は傘を持っていない子供を見つけると、すごい速さで追っかけて来て「させ、させ」と傘をさしかけるのだ。それだけの話なのだが、子供の頃はそれがすごく怖かった。
電車を降りて改札に向かう。傘をさそうとして、電車の中に置き忘れてきたことに気が付いた。仕方なく鞄を頭にかざし、どしゃぶりの雨の中を走った。
信号を渡ろうとすると、目の端に黒いものがすごいスピードで駆けて来て目の前に立ち塞がり「させ、させ」とオウムのような声で繰り返した。見ると傘のように見えたのは、トサカのように逆立った黒い髪で傘の柄のように見えたのは鈍く光る刀だった。
「刺せ、刺せ、刺せ」
信号が赤に変わり、どしゃぶりの道路を赤く濡らした。
その他
公開:18/09/27 18:36

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

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