リセット

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博士は憂いていた。
歴史から何も学ばない人類の手によって地球が滅びようとしている。第五次世界大戦が終わり平和が戻りつつあるけれど、その間も自然は破壊され、小さな争いは絶えず起きている。いずれまた大きな争いも多大な犠牲とともに起きるだろう。
ならば。
博士の手元にはボタンがあった。押せば地球上の生物が全滅する兵器のボタン。生き残るのは地球という惑星ただひとつ。長い時間をかけ、美しい姿を蘇らせてくれるにちがいない。
しかし、飼っているオウムを見ると、罪なきものを道連れにしていいのかと決心が揺らぐ。
何日も何日も博士は悩んだ。やがて不安や疲労に蝕まれた心臓に痛みを覚え、前のめりに倒れた。部屋を飛び回るオウムが「ハカセ、ハカセ」と鳴く。静寂は答えを返さない。
博士の傍に降り立つと、オウムは首を傾げ澄んだ瞳を向ける。
愛する人に撫でて欲しいオウムはその嘴で、ボタンに乗った博士の指先を一度、つついた。
SF
公開:18/09/24 21:00

みなみ

はじめました。はじめまして。

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