残念賞

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僕の家は貧乏だった。
そんな事情を知っていた商店街の人たちは、値段が足りていなくても福引券をくれた。
おかげで期日までに、二回分を貯められた。
「頑張って。」
応援する回りに背中を押され、福引きを引く。一枚目を見ると『残念賞』の文字があった。
「残念賞はティッシュだね。」
周りから溜め息が聞こえた。励まされながら二枚目を引く。
『残念賞』
僕は溜め息を付いた。
福引きのおじさんも残念そうな顔をしている。
「特賞の旅行券当たっても、行ける時間はありません。一等の掃除機も、狭い部屋には必要ないです。二等のゲーム機もカセットが買えませんから。」
僕は必死に言い訳をした。
「ティッシュはとてもありがたいです。高くて買えないので、いつも袖で鼻をかんでしまって、洗濯が大変ですから。」
そこまで言って涙が出てきた。とても惨めな気持ちになった。
商店街の人達から、沢山の美味しい残念賞をいただいた。
その他
公開:18/09/24 02:33

Y.S

社会人になってから小説のアイデアが湧かなくなったので、リハビリがてらショートショートを書いていこうと思います。

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