歌に込めた想い

歌には歌い手の想いが宿る。
僕は込められた想いを見ることが出来る。そのせいで苦労もした。
高校生の頃、合唱練習中に大量の想いが見えて気分が悪くなった。周りには、サボりだと思われた。
大学時代、寮の新歓でカラオケに行った際、強い負の感情が見えて吐き気がした。歌っていた本人は怪訝そうな表情をしていた。
合唱の時の指揮者からは理由を聞かれ、大学でもカラオケの後に彼女から理由を聞かれた。
彼女には何度も理由を話した。その度に疑義の目で見られた。
僕は想いを見れるだけで、その想いの根元が分かる訳ではない。悲しんでいることが分かっても、どうして悲しんでいるかは分からない。
「証拠を見せて」という彼女に、僕は何度も説明した。
同じやり取りをしている内に、彼女とは仲良くなった。
それでも、全く理解してくれなかった。
彼女の歌に『愛してます』が込められていた事に気が付くまでは。