塀の中の白い恋人

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私の恋人は陽気な人だった。
そしてヤクザだった。
性格がヤクザとかそういうことではなく、本物のヤクザだった。
ある日、抗争で顔の皮膚が削がれて以来、白い仮面を被るようになった。
そんな彼は兄貴分の代わりに罪を被って、投獄された。

彼は塀の中では「白い仮面の男」と呼ばれていた。
私にとっては、塀の中の白い仮面の恋人だった。

初めての面会をする時も、彼は白い仮面を被っていた。
彼は近況を面白おかしく話してくれる。
私にとっては、堀の中の白い仮面の面白い恋人だった。

年月が経った。
彼は「俺のことは忘れてくれていい。新しい恋人を探せ」と言った。
しかし、私は彼のことが、まだ好きだった。

ついに出所の日となった。
久しぶりに会う彼は、白い仮面を被っていなかった。
長い獄中生活で、性格も変わってしまった。
これでは、塀の外の黒い恋人だ。
私は、塀の中の白い恋人が好きだった。
彼はもういない。
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公開:18/09/23 23:37
塀の中の白い恋人 スクー

undoodnu( カントー地方 )

構成の凝った作品が好きです。
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