花柄ドレスの女

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花柄ドレスの太った女が大荷物を下げてカフェに入って来た。二人席は満席。カウンター席と四人掛けが空いていた。
「どうぞ、こちらへ」
店員は彼女に広い席を勧めたが、女はカウンターを選んだ。
「あたしは福の神なのさ。すぐにお客が沢山来るよ」
言葉通り、次々と客が入って店の前には行列が出来た。

花柄ドレスの太った女が店に入って来た時、その店は閑散としていた。ボーイは隅の二人席へ案内したが、女は広いテーブル席に座った。
「しばらく客は来ないよ。あたしは貧乏神だからね」
そしてその通りになった。

花柄ドレスの客を見送り、マスターは扉にクローズの札を下げた。赤字続き。今日で店を畳むつもりで中に戻ると、忘れ物の紙袋があった。急いで外に出たがもう姿はない。
明日、取りに来るかもしれない。あと一日だけ店を開けよう。
そうして一杯一杯珈琲を淹れているうちに店は繁盛し、忘れ物のネコ缶は店の守り神になった。
ファンタジー
公開:18/09/25 20:27

鰆木コアミ( 東京 )

コーヒーと本屋さんが好きです。

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