さよなら、俺の恋人

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「寒っ」
俺は思わず縮こまった。
刑務所の朝は早い。
これから朝一番の点呼が始まるところだ。

俺? 詐欺で捕まったただのチンピラさ。
自分だけは大丈夫だと思っていたのに。
仲間に裏切られてこのザマだ。

辛いばかりの刑務所生活。
わずかな楽しみの運動時間に、グラウンドの片隅でお前と出会った。
春の日差しに包まれた白い姿は、まるで天使のようだった。

あれから、お前にそっと話しかけるようになった。
きっと「柄にもない」と笑うだろう。
それくらい愛しくてたまらなかったんだ。

ある日、俺は面接に呼び出された。
無事に行けば来年の春には仮釈放になる。
夢にまで見た塀の外。
お前と出会ってから何度目の春になるだろう。

お前が花を咲かせ、白い綿帽子をつける季節。
俺は胸を張って塀の外に出て行くはずだ。
二度と戻ってきたりしない。絶対に。

さよなら俺の白い恋人、グラウンドの片隅に咲くタンポポ。
その他
公開:18/09/25 14:56
更新:18/09/25 15:10
スクー 塀の中の白い恋人

ろっさ( 大阪府 )

短い物書き。
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