四役所

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猛暑の影響で人手不足の夏課に異動して一週間が経った。
配属したての新人は虫を担当するのが通例で、七歳になる蝉の幼虫に成人式の案内を送ったり、クヌギの木をおだてて樹液が出易いようにしたりと、この時期は来年の準備に追われる。

「手慣れてるね」
作業をしていたら先輩に声をかけられた。
「前、秋課だったので」
「道理で。頑張って」
軽く手を振る背中がかっこいい。
夏課に来たからには自然担当になりたい。
山びこの音量と反響角度の設定、海の塩分調整や入道雲を膨らませる作業など、大変だけど花形の係だ。
「キュージにエサあげといて」
係長に言われた。キュージは夏課で飼っている生き物で、今は小さいけど、来年の夏には甲子園に棲む立派な魔物になる予定だ。

さっき細かく砕いた蝉の脱け殻を袋に詰めて役所内の便に乗せた。
秋課でそれを受け取って風にさらすと、緑の葉に夕暮れの色をつける。

夏が終わろうとしている。
その他
公開:18/09/22 16:30

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