母よ

例えば全ての影響と可能性と誘惑と迷いと焦りと痛みと愛おしさと苦しさと物悲しさと恨みと妬みとさまざまな欲望と勘違い、さらにもっとさまざまなそれらから、私たちは決定を下すんだって言うのに。

私たちはあまりにも端的に、わかりやすく、そのさまざまの末致し方なく決断したその事項だけを取り沙汰する。
そんなことではいけないよ。その決定事項を重視するのはもちろんのこと、決定するまでの過程にどんな醜い感情のせめぎ合いがあったのかを、醜く貪欲に知ろうとすることが大事じゃないかな。

いつだって人は言う、その物事の結末の揚げ足だけを取るようにして。
それは間違っている、と。
今すぐ辞めるべきで、今すぐ別れるべきで、今すぐ"正しい"道に戻るべきだと。

だったら言わせてもらうけれど、私はあなたに言わなかっただけで、ただの一度も"正しい"道なんて歩いた自覚はない。

母よ、あなたは私を見間違えている。