箱の中身

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 兄の手紙にあった指示で訪れたその店は古い団地の一室にあり、紹介がないと入れないそこに証しである手紙の蝋封を示して入っている。
「私も永いがこういう形で入って来たのはあなたが初めてだ」
 そう言うと店主はおもむろに小さなマッチ箱のようなものを取り出し机の上に置く。
「蓋は複雑な細工で出来ていて開けられない」
「じゃあ中は?」
 店主は首を竦める。手紙には箱を手に取れとあったので思い切って触れてみた。
「やれ、ようやく出られる」
 耳元で聞こえたのは兄ではない声だった。
 気が付いた時には暗い部屋の中に居た。外から声だけが聞こえる。
「手紙とは考えたな」「来るかどうかは賭だった」「久しぶりの娑婆か」「百年ぶりだ」「次はいつだ」「いつかこいつの声が聞こえたらそれが合図だ」「その頃はうちも代替わりだ」
 よく解らないが簡単には出られないらしい。マッチ箱の中で兄じゃない声を聞きながらへたり込んだ。
ホラー
公開:18/09/21 23:27
更新:18/09/21 23:29

たかはし

プチコン花の15編のひとつに
選んで頂きました。
 

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