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周りではゼッケンをつけた各校のランナーがストレッチを繰り返していた。
チーム全員の思いを繋いだ襷を胸に、もうすぐ柳瀬がやってくる。あと一人抜けば念願のシード権獲得。その距離は少しずつ縮まっていた。俺の責任は重大だ。
大きく深呼吸。
なに、走り出したら一瞬さ。
「隆史!」
不意に名前を呼ばれて振り向くと、田舎にいるはずの親父が立っていた。
「な、なんでここに…」
「息子の晴れ舞台だからな」
親父がニコリと笑った。
「夢が叶ってよかったな。箱根で走るんだろ?」
「親父、俺…」
「誰にだって出来る事じゃない。お前の輝ける集大成だ。胸を張って走ってこい」
「言われなくてもわかってるよ!」

ありがとな、親父。

スタッフの声に顔を上げると、道の先に柳瀬の姿が見えた。
よし!
箱根駅伝10区15キロ地点。
給水係のゼッケンをつけた俺はペットボトルを握りしめ柳瀬に併走した。

「頑張れ、残り8キロ!」
青春
公開:18/09/22 23:20
更新:18/11/15 00:01
スクー 父兄参加の補欠 スクー連作短編

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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