秋風に手を振って

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「……続いて、台風情報です……」
ラジオから流れてきたのは台風情報。
まだ私の住む地域には、台風は来ていない。
がらんとした部屋を、緩やかな秋風が通り抜けた。
とはいえ、夏も終わり、半袖の腕が、少し肌寒い。

「……おたよりのコーナーです。ペンネーム……」
あなたの横顔を思い出す。
隣にいても、そこにはいないようで。
背中合わせに座って、笑い合うこともできない。
心許ない背中に、温もりはない。
今までここにいた、あなたがもういないから。

「……リクエスト来ています……」
もう戻れないの。
あの日流した涙は、あなたには届けられなかった。
泣き顔を見せたくなかったから。
あなたの声に、顔に、振り向きたかった。振り向けなかった。
秋風が夏の思い出を吹き飛ばしていく。
思い出の欠片が少しずつ、少しずつ、吹き飛んでいく。
ありがとう、さようなら。

「……最後にこの一曲。『秋風に手を振って』……」
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公開:18/09/20 02:00
更新:19/03/23 04:53
140文字小説リライト 「秋風に手を振って」を聴いて

undoodnu( カントー地方 )

構成の凝った作品が好きです。
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