その時が止めたい

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「12秒! 遅ーい」
島田さんたちが何かをして遊んでいる。
僕は少し気になったが、読んでいた本に視線を落とした。
「ねえ、気になった?」
顔を上げると、目の前に島田さんがいた。
「島田さん、何していたの?」
「これ」
島田さんは右手を前に出してストップウォッチを僕に見せた。
「あー、10秒ちょうどで止めるやつ?」
「そうそう。やってみる?」
「別にいいよ」
本当はちょっとやってみたかったが、断った。
「えー、本当はやってみたいんじゃないの?」
「そんなことないって」
「まあまあ、やってみなよ」
島田さんは僕の手を握って、ストップウォッチを押し付けた。柔らかな手の温もりに、少しドキッとする。
「わ、分かったよ。やってみる」
「ふふ。じゃあね、スタート!」
1、2、3、……。
「さっきね、私とね……」
6、7、8、……?
「大好き!」
「え?」
「15秒! 遅ーい」
一瞬時が止まった気がした。
青春
公開:18/09/20 01:10

undoodnu( カントー地方 )

構成の凝った作品が好きです。
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