こそどろ

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家族構成は調査済み。この時間、マンションには小僧が一人だと知っていた。
「簡単にドアを開けちゃ駄目じゃないか」
こそどろは嫌らしい笑みを浮かべながらも、眉間に力を込める。
「ママは?」
小僧は凍てついて阿呆面を晒す。
「口が聞けないのか?そんなことはないだろう。パパは?」
すると、激しく首を振った。
「そこは大きく否定するんだな」
こそどろは一安心。顔が弛緩すると鼻の下で結わいた唐草模様の手拭いが緩む。
こんなに分かりやすい格好をしてやったのに、スコープも覗かずにドアを開けたな。
「ママは一体どんな教育してんだ?」
「ママはね、もうママって呼ぶなって言う癖に、自分のことをママって言うよ。パパもだね」
こそどろは目をしばたたく。すると、階下から響く男達の靴音。
気づけば小僧の手には携帯端末。
「おまえが呼んだのか?」
こそどろは目を丸めた。
「またいつか一緒に暮らそうよ」
その他
公開:18/09/20 22:50
更新:19/02/23 18:17

puzzzle( 神奈川19区 )

作文とロックンロールが好きです。
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