ボトルメール

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 この入り江には、一日に何本ものボトルメールが漂着する。潮流からして、遠方より流れ着くとは考えにくい。深夜のテレビ番組で、どこからボトルを流せばこの入り江に着くのかを検証し、数キロはなれた松林のある浜からではないかと結論付けた。その浜には廃屋があり、心中事件の現場だと噂されていた。
 流れ着くボトルメールの内容はみな同一で、心中ではなく殺人だとの告発と、電話番号が記されているのだ。入り江には「ボトルメールの番号は事件とは無関係」という立看板が立っている。
 番号主がモザイク音声処理で番組に登場し「大変迷惑している」と訴えたが、かえって電話は増えたという。
 現在、廃屋周辺は立ち入り禁止だがボトルメールは流れ着く。だが、そのボトルの中にキャンドルを立てて、最後まで燃え尽きたら恋愛が成就するという噂が広まると、メールよりもボトルが話題となって、ようやく電話は減ってきた、と、番号主は笑った。
ミステリー・推理
公開:18/09/19 12:03
更新:18/09/19 13:14

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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