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なぜ、あんなものがぶら下がっているのだろう?
あなたは、駅前のホールに初めて立ち入る。吹き抜けの中二階にあるコーヒースタンド。店員の女の子に声をかける。
「ホットコーヒー一つ」
「お砂糖とミルクはおつけしますか?」
「いや。ブラックで」
彼女は頷いて、アルコールランプに火を点ける。
「サイホンは加減が難しいよね」
「私は…プロですから」
そういう彼女の、真新しいエプロンから見え隠れするブラウスにある、袈裟懸けの茶褐色の染みに、あなたはやるせない気持ちになる。
「ブラックです」
カップに注がれたコーヒーの馥郁たる香りの中に浮かぶ小さな気泡の一つ一つに、はるか十五階辺りにあるそれが、映りこんでいた。
たった一本の鉄線に危うく吊り支えられ、キリキリと回転している一基のジェットエンジン。
あなたは、その直下に席をとり、手帳を開くと、客の一人一人の特徴を克明にスケッチし始める。
あなたは、駅前のホールに初めて立ち入る。吹き抜けの中二階にあるコーヒースタンド。店員の女の子に声をかける。
「ホットコーヒー一つ」
「お砂糖とミルクはおつけしますか?」
「いや。ブラックで」
彼女は頷いて、アルコールランプに火を点ける。
「サイホンは加減が難しいよね」
「私は…プロですから」
そういう彼女の、真新しいエプロンから見え隠れするブラウスにある、袈裟懸けの茶褐色の染みに、あなたはやるせない気持ちになる。
「ブラックです」
カップに注がれたコーヒーの馥郁たる香りの中に浮かぶ小さな気泡の一つ一つに、はるか十五階辺りにあるそれが、映りこんでいた。
たった一本の鉄線に危うく吊り支えられ、キリキリと回転している一基のジェットエンジン。
あなたは、その直下に席をとり、手帳を開くと、客の一人一人の特徴を克明にスケッチし始める。
その他
公開:18/09/19 10:36
更新:18/09/19 10:55
更新:18/09/19 10:55
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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