障子の向こうの秘密

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「決して中を覗かないでください。いいですね」
道端で倒れていた所を拾った青年は、そう言って障子の向こうに姿を消しました。
やがて一時間も経たずに、
「助けていただいたお礼です」
出てきた彼は、原稿用紙を私に手渡したのです。

彼の書く物語は、村中で評判になりました。
みんなが我も我もと、原稿用紙の写しに手を伸ばします。
彼は障子の向こうに隠れては、新しい話を持って出てきます。
どうしたらあんなに面白い話が書けるんだろう。
彼は障子の奥で何をしているんだろう。
それを知りたい気持ちが、私の中にふつふつと沸き上がってきたのです。
そしてとうとう──

「見てしまったんですね」
青年は寂しげに言いました。 
「見られたからには、もうここにはいられません」
彼が去った後に残されたのは、一冊の本。その題名は。
『たった40分で誰でも必ず小説が書ける 超ショートショート講座』。
その他
公開:18/09/21 20:00
更新:18/10/08 20:05

にしおかゆずる

自分のペースででゆるゆると。
昔書いたtwitter小説を転載したりもしています。
 

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