秋の終わり

4
7

 季節外れの雪虫が高い空に舞い上がる。ふらふらと鼻先に飛んでくる。それを手ではらうと、風に乗って逃げていく。あわてんぼうは、冬を求めるように北の空へ飛んでいった。
 風がびゅうっと吹くと、枯れ木を揺らす。おまけに鳥が飛んで、最後の葉が落ちる。短パンを履いた子供たちが、葉を掴まえようと右往左往する。
 どこかの庭から焼き魚のにおいがする。団扇をパタパタを扇ぐと、炭がパチパチと返事をする。塀の上の猫が風上に駆け出す。
猫と人間の戦いがどこかで起きているようだ。
 公園では散歩中の犬が駆け回っている。枯れ葉がカサカサっと音を立てる。毛に引っ付いた葉を飼い主に取ってもらうと、再び枯れ葉とじゃれだす。立ち上がって身震いすると、取れた葉が風に攫われる。
 次に吹く風は何を運ぶのだろうか。
 一つ強い風が吹くと、高い空から白い雪が一片降りてくる。心の中でさっきまでのあわてんぼうに謝って、家路につく。
その他
公開:18/09/17 01:22

Y.S

社会人になってから小説のアイデアが湧かなくなったので、リハビリがてらショートショートを書いていこうと思います。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容