サバンナの夜

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昼間、滅入ることがあった僕は、なかなか寝付けずにいた。珍しくどこかで犬の遠吠えのような鳴き声がする。気分転換しようと、マンションの駐輪場から自転車を出しサドルに跨がった。すると、前輪がいきなり持ち上がりヒヒンと馬のようにいななき、走り出した。

いつのまにか握っていたハンドルが手綱になり、黒い毛並みに真っ白なタテガミをもった馬に跨がっていた。
馬は気持ち良さそうに風を切り加速する。
流れるように景色が変わり、真夜中の町はサバンナになっていた。シマウマやガゼルやヌーに乗った者がいる。
チーターやヒョウやライオンが道路を飛ばし、ダンプカーのようなゾウの大群が眼の前を横切った。
電柱のように見えたのはキリンで、どこまでも広がる草原が目の前に開けた。
気が付くと、空が白み始め、僕はマンションの駐輪場にいた。

眠れない夜、耳を澄ますと遠吠えが頭の奥に響く。僕は目を輝かせて真夜中のサバンナに向かう。
その他
公開:18/09/18 19:19

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

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