鳥になりたい

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ピンクのカーテンを纏いながら、僕は教室から夕暮れ空を見ていた。こういうミュージック・ビデオがあったなぁ。よくよく考えてみたら、こんなシチュエーション滅多にあるもんじゃない。それは僕みたいにこうして部活をサボってナーンとなく黄昏てるヤツにしか出会えない。そう思うと他の人たちは絶対に経験できない美的体験ができたような気がしてきて、この時間にも意味があると思えてくる。
それでも気になるには気になる。今頃何も考えずにたーだダラけながら無意味な練習を重ねてるアイツやアイツやアイツ…。
向かうべき道さえあれば、僕だってそこに向かって全力疾走できるのに。そんなセリフを言ってみる。
いや、向かうべき道なんてないのかもしれない。そうだ。夏は北に、冬は南に行くのではない、自由な、「鳥」になりたい。
僕は両手を広げて鳥のポーズをした。グラウンドの奥の森から、巨大な黒猫が瞳をらんらん光らせてこっちを見ていた。
青春
公開:18/09/18 17:59
更新:19/01/01 18:52

北瓜 彪

ショートショート講座(2019年7〜9月期)にも参加
しました。
皆様宜しくお願いしますm(_ _)m

※アルファポリス
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/664452356
でも活動しています。SS講座で提出した作品「ファンフラワーに関する見聞」「大自然」もそちらで公開しております。
 

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