夢の筆

11
14

僕は画家だ。名前だけだけどね。
一度はコンクールで入選したけど、後は鳴かず飛ばずさ。

作品を描こう。
そう思って道具箱を見ると、見慣れない筆が入っていた。
「夢の筆」と書いてある。
なんだ、馬鹿馬鹿しい。

でも、ちょっと気になる。
テレビで見た分厚いステーキ、美味しそうだったな。
僕は筆を走らせた。

ジュージューと音を立てて、ステーキが現れた。
そういえばお腹が空いていたんだ。
早速いただこう。

「本当だったんだ」
何を願おうか。
そうだ、誰かと一緒に食事がしたい。

僕は理想の女性を描き始めた。
筆がどんどん進む。
もう少しで完成だ。

その時、部屋のドアが開く音がした。
「こんにちは」
絵とうりふたつの女性が立っていた。

......ここで僕の記憶は途切れている。
首にかかった、両手の感触と一緒に。
「夢はいい夢ばかりじゃない」
薄れゆく意識の中で僕はそんな事を考えていた。
ファンタジー
公開:18/09/18 07:00
更新:18/09/18 04:06

ろっさ( 大阪府 )

短い物書き。
皆さんの「面白かったよ!」が何よりも励みになります。誰かの心に届く作品を書いていきたいです。

54字の物語・更新情報はTwitterでチェック! ぜひ遊びに来てください。
https://twitter.com/leyenda_rosa

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容