ブラックドリーム

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就寝時に好きな夢を見られる夢枕が発明され、人々は列をなして買い求めた。秘密キーを使えば、リアルタイムで他人と夢を共有することもできる。
「今夜、海はどう?」
遠距離恋愛中のふたりが逢瀬を楽しんだり、
「孫を連れてくるね」
渋滞に巻き込まれることなく手軽に帰省したりと、皆が夢を自由に楽しむようになったある日、それを仕事に応用しようと考えついた人がいた。早速部署の人間に声をかけると、夢の中で会議を試みた。
ノートやパソコンに残した記録は儚く消えてしまうけれど、記憶ならば翌朝も残っている。勤務時間外に仕事でき、残業代はいらない。なんたって夢枕保有率ほぼ100%だ、今更「持っていません」という嘘が通じるはずもなく夢勤務は瞬く間に一般的となり、ブラック企業ならぬブラックドリームという言葉も生まれた。
夢枕を発明した博士は、働きすぎな日本人の生活を楽にするものを次こそはと、今夜も夢で研究を続けている。
その他
公開:18/09/17 21:00

みなみ

はじめました。はじめまして。

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