ばっくざらん

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「まあここはひとつ、ばっくざらんにいきましょう」
クライアントが言うのに、俺は思わず吹き出した。
その込み上げる可笑しさから隣に座る同僚に目くばせをしたが、同僚はなんともいえない表情で俺を見返すばかりだった。

「なあさっきあの人、ばっくざらんって言ったよな」
会議のあとこそりと耳打ちすると、同僚は不思議そうな顔をした。
「お前、ばっざらくんも知らないのか?」
「は? ばっくざらんだろ?」
いや、それも違うが。
「お前、理系だったもんな。しょうがねーか」
「いやそうじゃなくてさ……」
俺の反論を聞きもせずうんうんと頷く同僚は、勝手にわかったような顔をしている。
「でも、ばっらくざんくらいは覚えておいた方がいいぜ」
「え? ……なに?」
「らっくばんざ」
俺は混乱した。
「言いたいことがあるなら言えよ。それこそ、ざっくばらんにさ」
そう笑う同僚に思わず叫ぶ。

「ざっくばらんってなんだよ!」
その他
公開:18/09/15 22:33
ばっくざらんの会

ゆた

高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。

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