ビールおばさん

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「この子だけは許して!連れて行かないでー」とキリンのビールは後味の悪い夢で目覚めた。

この動物園にいる中で私が一番最年長。だから皆からは「ビールおばさん」と呼ばれている。園内の一番隅に居て、長い首で皆の檻を眺めてる。今では「ビールおばさんはすぐ笑うから」と言われるが昔は全く笑わなかった。ここには人間の利益のためだけに連れてこられた。母親との別れは今でも夢に出てくる。私の正面にメスゴリラのスーがいる。この子は両親を目の前で失ったらしい。だから百獣の王ライオンにそいつらをやっつけて欲しいと願っているうちにいつしか恋に落ちてしまった。同じ檻に筋肉隆々のオスゴリラが居るのだけれど、見せかけだけのオスなど興味がないと見向きもせずにいる。この子はいつも仲間たちとケラケラ笑っている。そんなス―をずっと見ていたら悲しむ時間がもったいなく感じた。
それから私は「笑い上戸のビールおばさん」になった。
ファンタジー
公開:18/09/15 09:45

まりたま

いつか絵本を1冊出せたら...
そう思いながら書いてます。
少しだけホッコリしていただければ嬉しいです。
でも、たまにブラックも書きますけど。

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