あっと電気

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街の灯りが消えて、はや1時間。
どうやらこの停電も長く続くらしい。

「あっと電気、買っといて良かったねえ」
母が取り出したのは、以前の地震を反省し購入した、簡易自家発電機だ。
「でもこれ、深夜に使うのはちょっと…」と言いかけた途端、 お隣りから怒号が聞こえた。
「バカヤロー!」
「緊急事態だから、皆使ってるのよ」
人の大声をエネルギーにして蓄電する「あっと電気」は手軽で便利だが、いざとなると使いづらい。
一回で溜まる量はスマホの20%程度で、一定量を蓄電するには、何度も叫ぶ必要がある。

なにより、街中から怒号が聞こえて落ち着かない。停電から24時間。人々の「叫び疲れ」も顔に現れている。

結局、街中には電気を求めて長蛇の列ができる始末。これでは前回の時となんら変わらない。
「でも、変な光景ね」
「なにが?」
「電気を求めて、産婦人科に列ができるなんて」
その他
公開:18/09/16 23:54
更新:18/09/17 00:05

あおい( 北海道 )

結婚し、幸せになりを潜めて3年。
再び書きたくて登場。
多分そのうちまた消える。

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