配膳考

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「うわっ、しまった!」
天丼屋で昼を食っていると、隣の爺さんが汁椀を盛大にこぼしていた。
──ああ、またか⋯⋯。
と俺は思った。

ご承知の通り、配膳は右に汁物、左に御飯と決まっている。これは主の物を左に配する左上位が由来だとか、単に持ち上げる回数の多い椀を右に配しているとか諸説あるが、はっきりした理由は分かっていない。
普通の和食ならさほど問題はないが、丼ものような巨大な飯椀が左にあると、汁椀を右手で持ち上げる際とても危険だ。さらに現代のプラスチック製の容器、狭い机上での余計な移動が、その指先を滑らせ事故を引き起こす遠因となっているのだ。
俺も昔はよくこぼしたものだが、今では料理が配置された直後に飯椀と汁椀をチェンジする。そのお陰で、以降大惨事を起したことは一度もない。

俺は慌てて机を拭く哀れな爺さんの元へ近寄ると、このショートショートの紙片を手渡した。
「ぜひ、これを読んでください」
その他
公開:18/09/16 20:43
更新:18/09/18 12:04
ただのボヤキです。

渋谷獏( 東京 )

(੭∴ω∴)੭ 渋谷獏(しぶたに・ばく)と申します。 小説・漫画・写真・画集などを制作し、Amazonで電子書籍として販売しています。ショートショートマガジン『ベリショーズ』の編集とデザイン担当。
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