片口鰯神社

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坂を上がると、こじんまりした神社があった。社号碑には『片口鰯神社』と記されている。
正面に大きな賽銭箱。その奥に魚が祀られていた。それは見た事のない小さな細長い魚。社号から察するに片口鰯という魚なのだろう。
変な神社だな、と思いつつ「せっかくだし……」とお賽銭を投げた。

チャリン。

その瞬間、祀られていた片口鰯が巨大化して飛び出した。と、同時に賽銭箱がチャリンコに変形する。
呆気に取られていると、片口鰯がそのチャリンコに乗った。いつの間にか腕と脚が生えている。そして僕の横をすり抜け、坂を下っていった。
「賽銭泥棒!」と、慌てて追い掛ける。坂の中腹で片口鰯が肩から顔面にかけて派手にこける瞬間を目の当たりにした。
「大丈夫?」と駆け寄る。「肩と口をいわしました」と言った片口鰯はチャリンと、さっき僕が投げ入れたお賽銭に……。

坂の中腹で、コーッとチャリンコの車輪の回る音だけが静かに響いた。
ファンタジー
公開:18/09/16 12:51
更新:18/09/21 01:16
カタクチイワシチャリン

壬生乃サル

まったり。

2022年…3本
2021年…12本
2020年…63本
2019年…219本
2018年…320本 (5/13~)

壬生乃サル(MiBU NO SARU)
Twitter(@saru_of_32)

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