人気のない料理(医院にて)

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 内臓が思い切り引きずり出されている(感覚がある)
「これは、ひどい……」
 金属と陶器とがひっきりなしにぶつかり合う音に、間断なく起こる歓声と笑い声とが私を苛立たせていた。
「遺族は? あ、まだ家族だ。あと友人とか関係各位に連絡を」
「盲腸? でもね。それじゃあ君、私の面目が立たないから」
「停電です。ブレーカー? あ、このロボットの操縦桿みたいな箱ですか?」
「いらっしゃい。君もいよいよ撃って出るわけだね」
 私は開腹されたまま、立食パーティーで最も人気の無い料理のような扱いで、無視されている。
「立食パーティーの?」
 腹立ち紛れに思いついたこの言葉を、私は噛みしめていた。

 2DKの医院内には、立錐の余地も無いほどの人がいる。私は、銀のトレイに腸を盛りつけられたまま取り残されて、どんどん冷めていくばかりである。
ファンタジー
公開:18/09/16 07:40

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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