船内サイキックショー

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それは船内イベントである超能力ショーの、最後の演目だった。
「そちらのご婦人、どうぞ前へ!」
私を指した自称超能力者の男に、ステージへと有無を言わさず引き上げられる。「ご婦人」と呼ばれるのには些か抵抗があったが、ことなかれ主義の私はしぶしぶ壇上へと上がった。
「これから、あなたの記憶の一部を消してみせます」
男の言葉に、信じてか茶化してかわからぬ歓声が客席から上がる。
私は男の指示通りパワーとやらを受けとめる姿勢を取って、この苦痛な時間が過ぎ去るのを、ひたすら待った。



結局、私の記憶は少しも欠けることはなかった。
ショーの手前サクラのようなことをした私は、ぐったりと疲れた身体で部屋へと戻った。
しかしルームキーを差し込んでも、なぜだかドアは全く反応をみせない。
「これは一体……」
船員に確認してもらうと、私のカードキーに記録されているはずの情報が、きれいさっぱり消えてなくなっていた。
その他
公開:18/09/13 22:48
更新:18/09/14 23:40
スクー 記憶がないカードキー

ゆた

高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。

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