つかまえた秋風

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朝、隣の席のシンジが小声で「秋風捕まえたんだ」と言って、誇らしげにメガネケースを見せてきた。
シンジは僕がこの学校に転校して初めて出来た友達だった。クラスで一番背が低くて、丸いメガネをしている。二番目に背が低い僕はシンジとすぐに仲良くなった。
それにしても、秋風?
「その中にいるの?」
見ると、メガネケースはカタカタと音を立てていた。
「うん。田んぼの稲穂でサーフィンしてたから、そーっと近づいて、パッて」
トンボかバッタのことを方言で秋風と言うのかもしれない。
今日は体育館で朝礼があった。みんなで壇上の校長先生の話を聞いている時、一番前に立っているシンジからカタカタと音が鳴った。後ろから覗きこむと、シンジはあのメガネケースをお腹に隠していた。
「何やってんだよ」
僕の声にシンジは驚いてメガネケースを落としてしまった。
その瞬間、体育館にビュウッと風が吹いて、校長先生のカツラを吹き飛ばした。
ファンタジー
公開:18/09/13 21:46
更新:18/09/15 20:43

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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