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その電話に、私は慄然とした。
「は?来れないってどういうこと?」
『ごめん、やっぱり行けない』
「あいつのせい?」
真面目で一途な友達。私は携帯を握り直した。
「いい加減にしなよ。あんたがそこに通いだしてから、大分立つじゃないか」
『忙しい人なの、お互いに時間が合わなくて』
「その間、あいつは他の女と会ってるってわけ。会えない間、あんたのこと気にかけてくれたことある?」
『仕事だから、仕方ない』
「仕方ないって、あんたどんどん身なりがおかしくなってるじゃない!一途もいいけどさ、少し他も試したら……」
『今日、会えるの』
毅然とした、彼女の声が聞こえた。
『ごめん、埋め合わせはまた今度』
通話が切れた。釈然としないまま、安堵もしてる私もいた。
「……よかったじゃん」
取っ替え引っ替えの私には分からないけど、嬉しそうな声だった。
私はクーポンを握りしめて、オープンしたての美容室に入っていった。
その他
公開:18/09/13 15:58
馴染みの美容室を裏切れない 髪伸び放題 見かねた母に髪切られた 慄然とするシリーズ

風月堂( 札幌 )

400文字の面白さに惹かれて始めました!
文字や詩のようなものを書くのが趣味です。
情緒不安定気味でアゲサゲ落差のひどい人間ですw
いろんな方々の作品を読んで、心を豊かにしていきたいです。

無料の電子書籍をつくりました。
『ショートショート作品集カプセルホテル【】SPACE』
a.co/1VIyjHz

『枇杷の独り言』
ショートショートコンテスト『家族』最優秀賞頂きました。

写真は全て自前でやっています(笑)

こちらで写真を紹介、ハガキにと販売しております!
https://minne.com/@sakoyama0705  - ハンドメイドマーケットminne(ミンネ)

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