何度でも入れる殺人現場

死体農場は思いのほか繁盛した。

特に警察には需要があった。殺人現場を再現でき、捜査に役立つらしい。
絞殺死体、刺殺体、焼死体、溺死体、この人間培養装置があればクライアントにすぐ対応できる。老若男女の細胞の一部を摂取すれば、数時間で死にたて新鮮な遺体が出来上がるのだ。
「はい！もしもし。これは西署の中川警部。女性の絞殺死体、死後三時間ですね」
「もしもし！ああ東署の十津川警部。男性の溺死体、死後五時間ですね！」
以来を受けると、まずスタッフとロケ地を作る。買い取った農地には、あらゆる場面を想定してある。つまり、何度でも入れる殺人現場ってわけ。

しかし、近隣の住民から悪臭がするとの苦情が相次ぎ、裁判で敗訴して廃業。マスコミの報道陣も責め立てた。
「遺体を商売にするなんて人道に反すると思わないんですか！」

「もういいでしょ。遺体で痛い目あったんだ。死体はやめてシタイことさせてもらいます」