おかん、立候補する

「後援会もあるで。となりの山田さんがやってくれるねんて。かしこくもない、裕福でもない。せやから、わかることもあるんや。庶民目線が大事やねん」と母。
「で？」
「女が元気やないと世の中おかしなる。卑弥呼でどやろ」
「どやろて、祈祷とか占いとかでけへんやん」
「小3の頃、浮気して、女と逃げとったお父ちゃんも帰ってきたやろ。あれもうちの力や」
「『丑の刻参りや』ゆうて、午後３時に藁人形もって釘うっとったからやん。それがばあーって噂になって、おとんが慌てて帰ってきたんや。友だちと見つけてしもた、俺の気持ちわかるか。担任には『ヒツジかサルの刻やとおもうで』いわれるし。しばらく近所で流行っとったし」
「ご近所中、夫婦円満になってよかったやん。それにな、ゲタで天気占って、外したことない。いざという時はこれや。晴れ女のうちと雨男のこの子がおったら、なんとでもなる」と困り顔の叔父が前に押し出された。