続・実写化に失敗した八百万の神

脚本を見直すと監督が消えた。
数週間後、ふらふらと戻ってきた。目はギラギラと血走り、クマは濃く深くなっていた。自慢の長髪はぼさぼさで、無精髭。服はヨレヨレ。

よなよな神が現れては、脚本についてあれこれ言われるらしい。素戔嗚尊の暴れっぷりはもっと苛烈だったとか、天の岩戸にお隠れになった時は大変だったとか。
散々愚痴り倒しながら、焼肉を喰らい、酒を浴びるように飲んでまた消えた。

数ヶ月後、彼から連絡があった。
別荘を訪れた。
クマもなく、澄んだ瞳をしていた。頭は剃り上げ、ヒゲもない。洗いざらしの白いシャツを着ていた。
「矮小で無知な自分が神を撮ろうなどと、畏れ多いことを申しあげていた。まずは神道から学びたい。そして順を追って日本に伝来したものを学びたい」
と晴れやかな笑顔で旅立って行った。