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夜中に腹の周りがこそばゆくなり、目を覚ますと、臍の穴から男が出てきた。恐ろしさに叫ぶと、男は驚いた顔でこちらを見た。
「ああ、大丈夫ですよ。あなたのお腹から出てきたわけではありません。私はタイムトラベラーなのですが、どういうわけかあなたの臍に出口が出来てしまったようです」
私は自分の臍を見た。いつもの臍だ。そーっと、指を突っ込んでみる。すると、みるみる指が入っていくではないか。
「わーーーっ」
「大丈夫です。戻ったらこちらの出入り口が閉じるように手配しますから安心してください。では失礼してちょっとよろしいですか」
男は私の臍に手を入れるとズズズッと入っていった。わかっていても気持ちが悪い。
男がすっかり見えなくなると、私は臍を指で広げた。中はどうなっているのだろう。覗きたい衝動にかられ、臍に頭を突っ込んだ。
その瞬間、前のめりに体勢を崩し、頭からズルリと臍の中に飲み込まれていった。
その他
公開:18/09/14 20:27

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

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