わくわく１日体験

身なりのいい男たちが深夜に歩いていた。

時折見かける家の灯りはすべて消えていた。
コンビニも遊興施設もなく、星が降ってきそうなほど近くに見えた。

先頭の男が一軒の家の前でたちどまる。
周囲に人影がないことを確認すると、男達はおもむろに準備を始めた。
作業服に着替え、腰にはポーチ。髪はヘアキャップの中にいれ、マスクをする。綿の手袋をはめ、さらにビニール手袋を重ねる。ズボンは靴下の中にいれ、同じ形の靴を履き、その上から足カバーをつけた。
黄色と黒のロープを越えて家の中に入る。
一団はペンライトを片手に、玄関から廊下を直進してリビングへ。

「一見すると綺麗なのですが、お手元のライトBを」
天井には滴り落ちてきそうな飛沫。
床には何重にも弧を描いた線。
「今回はこちらです。被害者は…」

２階でかたりと物音がした。
案内人が告げる。
「追加料金で体験ができます。いかがなさいますか」