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畑と荒地が続く夜の裏道に自転車を走らせている。僕はこれが「家路だ」ということを忘れようと、いつも試みていた。
行く手にコンビニの袋が落ちていた。唐揚げ弁当のパック。中にはキャベツと輪切りのレモンが貼りついていた。レモンを取り出し、匂いを嗅ぐ。瞬く間に唾液があふれる。僕はゲラゲラ笑いながら、レモンを舌先にのせた。涙が出てきた。蟻はレモンにたかるだろうか、と思う。全身にこすり付けたら虫よけになるだろうか。
裏道を抜けると交差点で、家は目前だ。僕は赤信号をぼんやりと見上げた。口の中に違和感を感じて指で探ると輪切りのレモンが出てきた。
「そうだ、こいつで試してみたら…」
真上にある歩行者用信号に、僕はレモンの輪切りを投げつけた。レモンの輪切りは、赤信号の人の頭にペタリと貼りついた。
「このまま家に帰ろうかな。そうだそうだ。そうしよう」
僕は息を詰めて横断歩道を渡り、「ただいま」と言った。
行く手にコンビニの袋が落ちていた。唐揚げ弁当のパック。中にはキャベツと輪切りのレモンが貼りついていた。レモンを取り出し、匂いを嗅ぐ。瞬く間に唾液があふれる。僕はゲラゲラ笑いながら、レモンを舌先にのせた。涙が出てきた。蟻はレモンにたかるだろうか、と思う。全身にこすり付けたら虫よけになるだろうか。
裏道を抜けると交差点で、家は目前だ。僕は赤信号をぼんやりと見上げた。口の中に違和感を感じて指で探ると輪切りのレモンが出てきた。
「そうだ、こいつで試してみたら…」
真上にある歩行者用信号に、僕はレモンの輪切りを投げつけた。レモンの輪切りは、赤信号の人の頭にペタリと貼りついた。
「このまま家に帰ろうかな。そうだそうだ。そうしよう」
僕は息を詰めて横断歩道を渡り、「ただいま」と言った。
その他
公開:18/09/11 23:17
更新:19/05/28 11:37
更新:19/05/28 11:37
シリーズ「の男」
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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