風

風が吹いた。
そこにはいろんなものが舞っている。
空気があるから風が吹く。

風はどんな所へも入り込んでいく。
風邪や桶もなんでも運んでいく。海の彼方までも

風を操るものはどこにでも行くことが出来る。
そんなことを考えた科学者がいて、風の噂となっていた。
風の噂なので科学者がいたかなんて誰もはっきりとした事は分からないけれど、風の噂ってのは風が運ばないといけないんだ。
だからその科学者が実は裏で手引きをしている。

煙の無い所に火は立たない。
風さえあれば何でもできてしまう。
科学者が見つからないのは風となって飛び回っているだけでなく、知ろうとしている人は不審死を遂げていたからだ。

風の回廊に佇む科学者の施設には誰も足を踏み入れてはいけない。もし科学者と対峙したいなら自分も風にならないといけない。そんな風の噂を信じた科学者がここにも一人。

風になるために、私はこの崖から……