幽霊のゴーストライター

14
23

あれは、僕が売れない新人作家だったころ、取材の帰りにふらっと立ち寄ったバーだった。
「お待ちしておりました」
「初めてだが?」
「私がお招きしたのです」
「気味が悪いな。他の店にするよ」
マスターは僕の名前と作品名を言い当てた。
「エスパーなの?」
「まあ、そんなとこです」
「で、僕のサインでも」
「いえ、あちらの方が」
彼が指差した先には誰もいない。
「視えるのか?」
「あなたの作品に感銘を受けたと」
マスターはそこにいる何者かに目配せをすると、シェイカーを振り僕にカクテルを差し出した。
「あちらのお客様からです」
僕は壁に会釈をして飲み干した。
仄かに青白いカクテルだった。
その時とんでもないものを呑み込んだ気がしていたんだ。

あのカクテルを飲んで以来、筆力が驚異的に上がった。まるで、自分の中にゴーストライターがいるような感覚。で、そのSF小説は大ヒットしたんだ。

「人造人間失格」
ミステリー・推理
公開:18/09/10 21:04
あちらのお客様から幽霊 スクー ゴーストライター

豊丸晃生( 大阪 )

ショートショートの神様、星 新一を崇拝しています。
お笑い系のショートショートを中心に書いていきたいと思いますので、よろしくです(^^)。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容