鳩時計

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彼は「ましかく」な生活をしていた。
真っ白い立方体の部屋に住み、均等な辺を毎日朝から晩までぐるぐると廻り続けるような生活だった。

ある日、四角張った部屋の壁に「鳩時計」が掛けられた。
「鳩時計」は、無限ループの日々に規則正しい警鐘を鳴らした。
「ポッポーポッポー」
鳩が飛び出す度に、彼は動きを止め、その仕草を見守った。

いつものように壁を見上げた彼は、決まった時刻になっても鳩が出てこないことに気がついた。
故障でもしたのかと時計の扉をひらいてみると、指先ほどの白い卵が転がり落ちた。
あわてて卵を時計に戻したが、それきり鳩は出てこなかった。
朝、昼、晩。時が来ると彼は「ポッポー」とつぶやいた。

11時59分。彼が静まり返った鳩時計に目をやり、マグカップのコーヒーに口をつけたその瞬間だった。
鳩は飛び出し「カッコウ」と鳴いた。
その他
公開:18/09/10 17:56
更新:18/09/14 19:41

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