おしゃべりな坂

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「傾き加減はいかがいたしましょうか?」
道を歩いていると、誰かに話しかけられた。

「上り坂、下り坂、どんな坂でも。どうぞお申し付けください」
注文を聞く坂なんて初めてだ。

「今日は重い荷物が多いから、もっとなだらかな坂がいいな」
「承知いたしました」

オーダー通りの坂を上った僕は、ふと坂に聞いてみたくなった。
「もう、坂になって長いの?」
「そうですね。いろんな人間を見てきました。
坂稼業も楽ではないです」

「無茶なことを言ってくる人間もいるだろう。大変だね」
坂は急に意地悪な口調になった。
「嫌な人間にはこうしてやるんです」

僕の身体が浮いて、ゴロゴロと下り坂を転がっていった。
「ひどいなぁ」
「いやぁ。ちょっとふざけただけです」
坂は申し訳なさそうに言った。

そして、そっと囁いた。
「この力、使ってみたくないですか? 今なら安くしときますよ」
SF
公開:18/09/09 23:13

ろっさ( 大阪府 )

"Plain words, honest hearts."ことばもこころも飾らない

誰かのこころに届く物語を綴っていきます。

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