そっくす

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入学式の日。全校生徒が白い靴下で揃えている中、一際目立った赤い靴下。それ以来彼から目が離せなくなった。
廊下で前を歩く赤い靴下を見つけ、思わず話しかける。
「ねえ、なんでいつも赤い靴下なの?」
ダルそうに振り向き、俺?と自分を指差す。
「好き嫌いが激しいんだ。足が」
「足が?」
「赤が好きなの。それ以外は嫌がるから、無理に履かせたくないでしょ?」
それはとってもシンプルで素敵な答えだった。
次の日、私はお気に入りのグリーンの靴下を履いて学校に行った。
「なんでグリーン?」
すれ違い樣に彼が聞く。
「これが履きたいって言ったから。足が」
「へぇ」
彼は意外そうな顔して、それから嬉しそうにハハッと笑った。
紺と白ばかりだった校内が、その日を境に少しずつ色づいていった。
卒業式の日、春の花が埋め尽くすみたいに、そっくすの花が咲いた。白一色だった皆の足はそれぞれの大好きに包まれて嬉しそうだ。
その他
公開:18/09/11 13:47

むう( 地獄 )

芸術なんてその日暮らしよ/人間界で書いたり読んだりしてる骸骨/読書、音楽、舞台、昆虫、ガチャが好き/松尾スズキと大人計画を愛する/ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集人/そるとばたあのマネージャー

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