秋風と眼鏡

風の噂によると動物には発情期があるらしい
それは決まって春に多いそうだ
でも人間に関しては別だ
年がら年中、人目もはばからず、あちこちでチュッチュしている
だから、私も周りの流行の波に乗るべく、恋を始めた
春先、旅先で一人の少女に出会った
夏、話してみると共通の趣味がある事を知った
二人で何度か会っているうちに次第に恋が愛に変わり、燃え上がった
秋、何だか冷めてしまった。時が経ち、冷静になってみると相手の嫌な部分ばかりが気になりだした。飽きが来たようだ
冬、だから彼女とは別れて、今は独り身なんだ
そうなの。それは良かったわね
どこが良いんだよ
だって私には未だに春は来ないんだから
しいてあげるならば、いつも一緒いるのはこの眼鏡くらいよ
私は一途だから、皆みたいにとっかえひっかえ変えたりしないの
いや、それは変えようよ。そんな古い眼鏡なんて外せよ。ほらっ
辞めてよ
キラーン
か、可愛い
えっ