一番傷ついている人へ

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子供会のクリスマスプレゼントがひとつ足りなかった。

サチは千円ぴったりの手帳を買ってきたのに、自分には何も無くて泣いた。
大人は困ってボールペンをサチにあげると、サチはギャン泣きした。
誰かがプレゼントを持って来なかった。
あたしは片付け係なので、サチが持ってきた手帳が置いてあるのに気づいた。
誰に当たったのかも知っていた。
なぜ置いていったのかもわかっていた。
騒ぎを大きくしたくないので、こっそり鈴木くんの家に行った。鈴木くん以外誰も居ない夜の家は暗くて寂しかった。
「いらない、そんなの!」
恥ずかしさで顔を真っ赤にした鈴木くんをあたしは傷つけてしまった。
「でも…」
言い終わらないうちに
アパートのドアが閉じた。鈴木くんの心の扉みたいに。
夏の終わりに、そんなことを思い出す。
夏休みの終わりに、
何処かへ転校してしまった。
誰も行先を知らなかった。

どうか幸せでありますように。
その他
公開:18/09/08 21:19

入月裕美子( 日本 )

できることからコツコツと。
 

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