記憶がないカードキー

「記憶にございません」

議員の金山光造は、そう言い逃れマスコミの記者会見を後にした。
金山は、車で愛人宅のマンションに乗り付けると、ドアにカードキーを差し込んだ。
『キオクニゴザイマセン』
「おい、冗談だろ」
カードキーの記録が書き換えられていたのだ。
金山は中にいる愛人に電話をかけた。
「開けろ」
『辞任も時間の問題ね、もう用はないわ』
「なにを言ってる！私が買ってやったマンションじゃないか！」
『記憶にございません』
見捨てられた金山は、仕方なく自宅に向かった。

自宅に戻ると、リビングのソファーで妻が金山を睨んで座っていた。
テーブルの上には、開封された白い封筒があった。
「それ、私宛に届いたのよ」
金山は封筒を見ると、差し出し人の名前はなかった。
「あなたに世話になったって」
中には、カードキーが入っていた。愛人のスペアキーだ。
「どなたのカギかしら」

「記憶にございません」